古代メキシコではカカオ豆がお金だったとご存じでしょうか?実際は調べてみると古代どころか17世紀でも使われていました。
今回はカカオ豆がお金としてどのような使われ方をしていたのかを中心に解説します。カカオ豆で買えたものや値段も併せて紹介するので、ぜひ知識を深めてください。
カカオ豆がお金として使われた理由
カカオ豆がお金として使われたのは、皆がカカオ豆とモノを交換できるという認識を持っていたからですが、これは全ての貨幣に言えることでもあります。
カカオ豆だけの事情に限っていえば、表面を覆う殻が固く丈夫だったや持ち運びしやすかったというのが理由のようです。
なお、実際にお金として使われたのは、カカオ豆以外にも布や金銀、石といったものがありました。ただ、カカオ豆が一般的な通貨として多くの人々に使われたのです。
カカオ豆のお金としての使われ方
たとえ、カカオ豆であったとしても現在のお金と全く同じように使われていました。
商品と交換することもできましたし、税金として納めるものでもありましたし、給料としても支払われていました。
市場では重さをはかって支払うことはなく、1粒1粒数えていて、カカオ豆を数える専門の職業があったのです。
カカオ豆の相場は?
カカオ豆の相場はその年の収穫量や地域によって上下し、一定ではありませんでした。カカオ豆の収穫量が多ければ安くなり、お金としての価値も下がったようです。
ただし、スペインに征服された後は人口が激減し、カカオ農園の世話をできる人がいなくなり放棄されたため、収穫量が著しく低下し、カカオ豆は高騰しています。
カカオで買えた商品の値段一覧
商品の値段は場所と時期で変わりますが、ここでは1545年メキシコのトラスカラを調査した査察官が残した文書からご紹介します。
雌七面鳥=100粒、しなびたカカオ豆では120粒
雄七面鳥=200粒
野兎=100粒、子兎=30粒
七面鳥の卵=三粒、鶏の卵=2粒
採れたてアボカド=3粒、熟れたアボカド=1粒
火を灯すために使う松の皮=5粒
アショロトル(サンショウウオの一種)=大なら4粒、小なら2粒から3粒
トウモロコシの包み皮にくるんだ魚=3粒
カカオ豆=お金ではありますが、相場以外にもカカオ豆の鮮度も重要なポイントのようです。しなびると価値が減り、多く支払わなければいけません。
おそらく市場では、「この豆しなびてる!」「しなびてない!」と激しいやり取りがあったのではないでしょうか。そう思うと微笑ましいですね。
50gの板チョコレートを作るのに使われるカカオ豆が約30粒なので、板チョコ1枚で子兎は買えます。
カカオ豆1粒で買えたもの
トマト(大)=1個
トマト(小)=20個
採れたての緑トウガラシ=2つ
熟れたトウガラシ=4つ
細長い緑のトウガラシ=5つ
野生の乾燥トウガラシ=3つ
辛い緑のトウガラシ=5つ
採れたてのサボテンの実=1つ
熟れたサボテンの実=2つ
サポテの実=大1つ、小2つ
薪=1束
タマル=1つ
グアバ=2つ
トウガラシの分類がかなり細かいのは中南米らしいですね。サポテとはフルーツの一種で、柿の仲間になります。
タマルは中南米の伝統的な食品で、ラードとトウモロコシの皮を混ぜた生地をバナナの皮などで巻いて蒸したもので、現在でも食べられています。
偽造もされたカカオ豆
カカオ豆はお金だったので、 現在の通貨同様、偽造もされました。そのため、カカオ豆を受け取った人は本物かどうか親指と人差し指で押して確かめたといいます。
偽造の方法ですが、本物のカカオ豆の中に野生のカカオ豆を混ぜたり精巧な偽物を作ったり、未熟だったり古いカカオ豆を加工したりと色々あったようです。
偽カカオ豆の材料として用いられたのが、アボカドの種子、アマランサス、粘土、蜜蝋といったものでした。
お金だったカカオ豆
古代メキシコの時代から中南米では17世紀くらいまでカカオ豆は一般的に最も流通した通貨で、干からびたものは価値が下がってしまいます。
使い方も現在使われる通貨と変わらず、売買や賃金の支払いなどに使われました。
庶民はカカオ豆を食べることを禁止されていたので、カカオ豆がむやみに減ることもありません。
悪い人はいつの時代、国にもいるもので、カカオ豆を偽造する集団もいたそうです。
参考文献
「チョコレートの手引き」(蕪木祐介・著/雷鳥社)
「チョコレートの文化誌」(八杉佳穂・著/世界思想社)
「チョコレートの歴史」(ソフィー・D・コウ/マイケル・D・コウ・著/河出文庫)